N川先生らしい文章(未完)

大学時代にスキャンした論文を読む企画。社会人になってはじめての実施となる。記念すべき第一弾は

CiNii 論文 -  公共圏はいかにして構想されうるのか(1) https://ci.nii.ac.jp/naid/110000935677 #CiNii

である。教養の英語でお世話になった先生である(そんなに熱心な学生ではなかったが。というか、当時の私パソコン使えなさすぎ)。

本論文の面白さは、①純粋にハーバーマスの『公共性の構造転換』の的確なまとめであること、②1点だけ〔新たな分野に乗り出したばかりだった著者の事情を考えれば仕方がない〕であるものの、当時の史料が引かれている点だと思う。

①については、「市民的公共圏は文芸的公共圏からはじまり、徐々に政治的公共圏に変異していった」というハーバーマスの論を知れたのが面白かった(読めよお前)。コーヒーハウスなどが世界史の教科書で強調される理由の一つなんだろうかと予想したが読まないとね。
 あと、知識が無さすぎていまいち理解しきれなかった(よくない意味で引っかからずに読み飛ばした)のが、文芸的公共圏を支えていたのは小家族という親密圏であったことである。

②については、著者のジェイムズ・ケイ・シャトルワースはどうも有名人らしい(ブリタニカ国際大百科事典には記事がある)。今度英語の練習に読んでみようかな(笑)

「本来開かれているものと構想されていたはずの公共圏が、経済的・社会的条件のみならず、そもそもの理念性に関わる面でも開かれているとは言えない」という。

英国階級社会においては、ハーバーマスの議論は通用しないという意味か。

某先生の研究対象、変遷を思い起こすと

ci.nii.ac.jp

所収の「イギリスにおける教育と階級のある断面 : スカラーシップボーイの不安」の時期から、文学研究を乗り越え英国文化研究に研究領域を拡大していることが窺える。

現在でも先生は観光史や観光社会学の人になっているが、教育や階級への関心は変わらないと思う。そういった意味で本論文は、とても某先生らしい論文なのではないか